貧困は人の手で作られる
少し遠回りをするが、資本と土地の違いを説明しておく。何も今の法律等の説明ではない。現在の法に照らし合わせると土地も他の資産の様に売買出来るし、所有も出来る。しかし、本来経済の原理からすると土地と資本は全く別の物である。違いは沢山有るが、重要な4つだけ挙げておこう。
少し遠回りをするが、資本と土地の違いを説明しておく。何も今の法律等の説明ではない。現在の法に照らし合わせると土地も他の資産の様に売買出来るし、所有も出来る。しかし、本来経済の原理からすると土地と資本は全く別の物である。違いは沢山有るが、重要な4つだけ挙げておこう。
| 資本 | 土地 |
| 株価の様にその価値が1日で数十倍になる事もある | 油田の発見の様に1日で数千倍以上にもなる事が有る |
| 基本的にその価値は時間とともに減少して行く | その価値は時間に左右されない |
| 基本的にその需要が増えれば、供給を増やす事が出来る | 需要が増えても供給には限りが有る |
| 移動させる事が出来る | 移動出来ない |
1. 急激な変化
一つ目はその価格変動が極端になる可能性を秘めている点に言及している。これは何も天然資源の発見だけにとどまらず、高速道路や鉄道の布設など人工的な変化に対しても同じ事が言える。
2. 価値の減少
二つ目は資本の性質である。どんなに耐久性の良い人工物でも老朽化すると言う法則である。良い例が家で、一般的に都会化の進む地域の物件は価値があがるが、実際にあがっているのは土地の価格だけで建造物である家の方は新築の時が一番値打ちが有るのだ。
この例外としてよく挙げられるのがワインなどの熟成する製品で一定期間は年月とともに価値が上がる。もちろん、いつかは酸化してしまうので、いつまでも上がり続ける訳ではないが、この一定期間を例外と見る事も出来ない訳ではない。しかし、実際にはこれは例外ではない。チーズを見てみよう。チーズはワイン程品質にムラがなく、またワイン程熟成期間が長くないので一般的に品質が整ってから売りに出される。
例えばカマンベールは製造後4週目が食べごろなのでその頃に食べてもらえる様に出荷する。製造直後は美味しく食べられないので、価値が低い。それでも、少々まてば美味しくなると分かっているので買って待つ人もいるかもしれないが、基本的に美味しくなったチーズを買えば済む話である。
ワインの場合はそうも言っていられない。熟成期間が10年くらいのワインでも、全てが飲み頃になってから売っていたら10年間分の在庫を抱える事になってしまう。いくら何でもそれでは資金繰りも容易ではないし、もし熟成してからあまり良くないと分かったら大損してしまうし、なんせスペースをとりすぎてしまうだろう。だから、易い値段になっても若いうちに売りリスクを分散するのだ。
この価値が上がるのは当然で、味が良くなるのと需要が増えるのに供給が減って行くのとで、駄作とラベルを張られない限りは飲み頃の時期まで価格は上がるだろう。これは購入者の費やした保管の手間賃プラス先物買いをしたリスクへの見返りである。
3. 限られた供給
また、話を土地と資本の違いに戻すが、最後の2項目が最も大切で土地と違い他の資本は基本的に供給を増やす事が出来るのだ。これは動物と人間の決定的な違いでもある。
この違いを理解しないと有名な経済学者の様な間違いを犯す事になる。マルサスの名前は聞いた事がないかもしれないが彼の唱えた人口論はどこかで知っていると思う。これは良くウサギと山猫の話を使って説明される。山猫の餌であるウサギの数が減ると山猫も餌が無くなり減少する。また山猫が減少すると餌になる確率が減るのでウサギの数も回復し、餌が増えた山猫の数も回復するといった自然のバランスに関して語られる理論である。
これは動物にのみ適用される法則だがマルサスは人間にも適用しようとして間違いを犯した。彼の間違いは人間はその需要が増大すると供給も増大させる事が出来る、その能力を計算の外に置いてしまった事である。
つまり、この例でいくと、人間の場合人口が増えてウサギの数が足りなくなると、ウサギを畜産(養殖)し数を増やし需要を満たすだろう。畜産すると価格が上がるので通常は行えないが需要が増えて供給が足りなくなると価格が上がるので畜産しても元手がとれる様になるのだ。(まあ、もっとも日本人にはあまりウサギを食べる習慣がないのでピンとこないかもしれない…)
この供給量を増やす能力が人間の秀でた所であり、現代社会の例でいけば携帯電話の売上が好調なので続々と新規参入がありサービスや価格に変化が有った様に需要が多ければ、そして市場が自由な競争に対して開放されていれば供給は増やしていけるのである。
4. 動産と不動産=動かせない
しかし、土地にはその法則が通じない。土地を増やせないのは自明の理だが、実際にはもっと深刻である。バブル景気が良い例だ。土地への需要が都心、特に商業地にて大きく跳ね上がった。しかし、もし資本の様に移動させる事が可能ならば「過疎化の進んだ土地がいくらでもあるではないか」と言えるが、実際に足りないのは都心の土地、その場所、地球上でのその位置である。過疎化の進んだ地方の土地は月の土地と同じくらい役に立たないのである。
これら4つの違いは人間によって作られたものかそうでないかが大きな違いだと思う。個人が作った物は個人が所有する事が出来る。社会全体で作った物は社会全体が所有するべきである。しかし、人間の作っていないものは人間が所有するべきではないのだ。これが次章に語る解決策の基本的な考え方である。
解決への糸口
この話は以前にもここでしたと思うが今一度します。
ある旅人が強盗に襲われ、抵抗も虚しく持っていた財産を奪われ縄で縛り上げられ猿ぐつわをかまされてしまいました。そこへ3人の住民が通りがかり縛り上げられた旅人を見つけました。
住民A:旅人が怪我をしているかもしれないからまず医者へ連れて行って治療をしてもらう。
住民B:いや、骨折しているかもしれないからここで応急処置を施す方が良い。
住民C:それよりも、早く旅人から財産を奪い取った強盗を追わないと、強盗が逃げてしまう。
と主張しました。
さて、あなたならどうしますか?
.
..
…
….
実を言うと正解は特にありません。あるのは解説で、住民Aの専門家に任せる考え方は計画経済に被せています。問題が起きると専門家(テクノクラート)に政策を作らせ対処させる社会主義的な経済路線の事です。住民Bの応急処置で真の問題解決ではないが、症状を抑えて人気(任期)獲得をするのは市場経済プラス民主主義的な考え方です。旅人の安否よりも奪われた財産の行方を気にするのは机上の論理に没頭する経済学者を模しています(笑)
この風刺で、私の話したかったのは、この3人は見当違いな議論をしていると言う事です。まず、第一にするべきなのは猿ぐつわと縄を外して、どこを怪我しているのか訊く事でしょう。もしかしたら、全然怪我など無いかもしれないのですから。専門家(テクノクラート)の意見よりまずは当事者の意見と意向を訊く姿勢が大切ですし(猿ぐつわを外す)、助成金や優遇政策、公共事業に税金を投じるより先に税金を軽減出来る様に努力する(縄をほどく)事が大事なのではないでしょうか?
第4の答え
この第4の答えが一世紀前に一世を風靡した経済学者ヘンリージョージの唱える土地の経済学なのです。つまり、ぎりぎりの生活を強いられている労働者には福祉やら手当が必要だと騒がれていた社会主義台頭の時代にあって、福祉(風刺では傷の治療)より前にまず縄をほどく事(=減税や規制の緩和)が先決ではないかと唱えていたのです。
税金をなくしてその代わりに地代を徴収するべきだと言っていたのです。実情からいくと固定資産税を残してその他の税金を撤廃する事になります。彼の言う地代とは異なり、今の固定資産税には建物の部分にも税金がかかり、建物や土地に加えた改善も建物同様に課税の対象となっています。
例えばただの更地を締固めるだけでも、価値は上がります。今はその改善分も課税されますが土地の経済学では地代だけで、その土地の上の建造物や改善により価値の上がった分は上げた人の物です。
地代を徴収すると言うのは何かものすごい負担の様に思えますが、実際今アパートなどの借家や借地に住んでいる人は家賃と伴に全額支払っているので、支払先が地主から税金に変わるだけで何も変わりません。
現在、家を所有している人は固定資産税の内、家や土地の改善に掛かる部分は免除されますが地代分は増えます。しかし、所得税が無くなると収入が増えますから固定資産税の増額分と所得税の減税分は相殺し合う形になるでしょう。まあ、地代はアパート住まいの若者達が支払える程度の額です、それにくらべ家を所有する年代の人の収入は若者より多く所得税も高いので、どちらかと言えば得だといえるでしょう。
所得税が無くなるのは一つ目の利点です。二つ目は法人税(企業の所得税)減税でこれは経済活性化、昇給、物価価格の減少などにつながりますし、消費税減税と合わせて物価価格は減少する事になるでしょう。
つまり、収入が増え、同時に物価が下がるので当然消費は拡大します。すると、企業の売上は上昇し景気は上向きます。景気が上昇するとまた収入が増えます。これは減税の収入増の上に追加としての収入増ですので、繰り返して何度も同じ事を言っているのではありません。当然、好景気の中では失業率は下がり、起業率は増えますからビジネスチャンスは豊富に出てくるでしょう。
通常、物価が下がると収益率が下がります。これは価格の中に含まれる利益の部分を削るからです。競争社会で価格に競争力を持たす企業の戦術ですが諸刃の剣でもあります。その点、税金が削られての価格低下に関しては収益率は下がらないので、企業の利益に影響はありません。売上の増加は利益の増加に直結するのです。この違いはとても大切です。
また、この物価安での売上上昇は政府の税金をつぎ込んで無理矢理作り出した特需効果ではないので持続性も安定性もあります。公共事業特需は政府と国民が疲弊して来ますし、汚職の温床にもなりますが、特定の人や会社に偏らない一般的な減税による消費の増大は汚職につながりません。
汚職と透明化
この汚職の問題も土地の経済学で解決可能です。悪い人間を良い人間にする事は不可能かもしれませんが、良い人間が魔をささない様にする事は可能です。たとえば、真面目だがお金に困っている人の周りで札束を放っておいたらそんな真面目な人でも魔が差すかもしれません。もし、盗みを働いたとすると、その様な状況を作り出した人にもある程度責任があるではないでしょうか?汚職も同じで現在の税収制度は汚職の温床です。
逆説的に汚職をし易い環境とは何か考えてみましょう。まず、透明性がない、ルールが複雑である、基準と責任の所在が曖昧、権力の集中化、などでしょうか。そして所得税と法人税には、これら全てがあてはまります。実際に政府は管理不可能だと知っているので自主申告制にしているのです。各企業が毎年これだけ稼ぎましたという申告をしてそれに基づき課税をするので、抜け道は沢山有ります。
それに比べ地代は隠せません。土地の取引価格を公開する法律の整備はもう少し必要ですが、基本的に土地を隠す事は出来ません。資産額に課税する際には帳簿上で隠す事が出来るでしょうが、土地そのものに課税する場合には隠せません。
個人や法人の所有物をリストアップするのは至難の業です。これは皆引っ越しする際に感じる事ではないでしょうか?何がどこに行ったのか分からなくなったり、無くなったと思っていた物が見つかったり。皆、持ち物を正確には把握していないのです。
しかし、土地をリストアップするのはそれほど難しく有りません。地図を見れば済む事です。区画図をもとに所有者を書き入れて行けば言い訳で、もし固定資産税が支払われていないのなら、公有地と見なせます。支払われているのなら支払っている人が所有者です。
地価公示により税金の徴収額は完全に透明になりますし、複雑怪奇な税収のルールも無くなり、税金の一本化で責任の所在も明確になります。地価は自由経済の中で需要と供給のバランスが決めてくれます。
その上、固定資産税は地方の税金なので分権化も進められます。当然、今の中央集権制度は見直されなければならないでしょう。地方が徴収した税金の内、何割かを都道府県に、何割かを国へ支払うといった感じになるでしょう。今までは国からもらう立場だったのに比べ、国に払う立場になるのですから地方の発言権が強まるはずです。
...では
では、こんなに良い政策ならなぜすぐにしないのか?
簡単な話です。利権にならないからです!(ダダーン)
と言うのは私見で、実際にはこの経済学を知る人がいないのが大方の理由だと思います。バブル景気が破綻した際に政府与党内でもヘンリージョージの著書が一部読まれていた様ですがその専門家はいませんでした。彼の名前でインターネット上を検索してもても対した物は出て来ません(英語なら別ですが)。Wikipediaですら何も載っていなかったので、自分で英語版を翻訳したくらいです。経済学者は名前くらいは知っているでしょうが、内容は検証しません。
実際まともに反論されている論文を英語でも日本語でも探しましたが見つかっていません。彼がそれだけ無名なのかと言うと、常にそうであった訳ではなく、当時(20世紀初頭)はとても有名で200万部以上売り上げた有名作家で世界でマーク・トゥエインにならぶ知名度を持っていたそうです。アインシュタインやルーズベルト大統領も彼の事を絶賛していますし、反証されたのならともかく、まともに反論すらされずになぜ今はこんなに無名なのか不思議なでなりません。
しかし、それはこの土地の経済学がこれから専門家によって、また一般市民によっても検証される必要があると言う事でもあります。では、これからの研究と実際の適用に期待を込めて今回はこれで〆とします。
テーマ:政治・経済・社会問題なんでも - ジャンル:政治・経済
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